靴に魔法をかけたのは
「私も皐月ちゃんが大好き。皐月ちゃんもしっかり仕事してるよ。事務は屋台骨なんだよ?」
 晴佳の言葉に、皐月はにこっと笑った。涙が千切れて、ぽろりとこぼれる。
「望月さんなら、きっと海戸さんがアメリカに行っても大丈夫ですね」
「え?」
 新しい情報に、晴佳は目をぱちぱちさせた。皐月ははっと口に手を当てる。

「すみません、もう知ってると思ってました……」
「どういうこと?」
「これ以上は……」
 皐月は涙を拭うと、席を立った。

「今日のランチはおふたりで行ってください」
 そう言って、皐月はすたすたと歩いて行く。
「ちょ、待って!」
 慌てて追いかけるが、皐月はそれより早く会議室のドアを開ける。正面には壁にもたれて立つ海戸がいた。

「海戸さん、話は終わりました。私は用事があるので、今日はおふたりでランチをどうぞ!」
「ああ……」
 勢いに押された海戸にかまわず、皐月は続ける。

「それから私、仕事は辞めません。きちんと働いてみんなを支えていきます!」
 言い切って、皐月はさっそうと歩いて行く。
 なにかをふっきった後ろ姿は、なんだかきりりとして見えた。

 ほっとした晴佳に「もっちー」と声がかかって、彼女はにわかに緊張した。告白まがいを聞いてから彼とふたりきりになるのは初めてだ。
 ひきつった笑顔を向けると、諒からはお客様に向けるような笑顔が返ってきた。
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