靴に魔法をかけたのは
部長の退室を見送ったあと、晴佳は目を輝かせて諒を見た。
「企画の募集があるなんて、すっごいうれしい」
「前からなんか提案してたよな」
「だけど全却下! 今度こそ認めてもらえる企画を出す!」
「商品部に行けばいいのに」
商品の仕入れや売り上げるための企画を作るのは商品部の仕事だ。
「でも現場で靴を売りたいのよね。一種の恩返し」
「コンプレックスをお店の人が解消してくれたってやつ?」
「店員さんのおかげで足デカ女から綺麗な足の女へと昇格できたのよ。だから私も靴でいろんな人を幸せにしてあげたいの!」
目をきらきらさせる晴佳に、諒はふっと笑った。
「はりきりすぎると、空回るぞ」
「そんときは教えてよね、同期さん」
「はいはい」
話しながら会議室を出たときだった。
「望月さん、海戸さん」
かわいらしい声がして、三年後輩の関内皐月が小走りに寄って来た。入社後の研修で晴佳の店に来て仲良くなった。研修後、彼女は本社の事務として勤務している。
晴佳を介して諒とも知り合い、仲良し三人組となった今は会議後にランチに行くのがルーティーンになっていた。
「クッキー作ったんです。よかったらどうぞ」
ラッピングされた袋を渡され、晴佳は顔を輝かせた。
「うれしい! いつもありがとね」
「さんきゅ。関内ちゃんのお菓子、マジおいしいもんな」
「ありがとうございます。お菓子作りは趣味なので……」
もじもじする彼女はオフィスカジュアルに身を包んでいて、一言で言ってかわいい。