靴に魔法をかけたのは
「うちってモールの中だからいろんなお店があるじゃん? 百均、スポーツ用品店、服飾店、順番に万引きしてた。うちの防犯機で音が鳴って発覚」
「こわっ! 倫理観どうなってんだ!?」
「警察は呼んだんですか?」
 皐月が尋ね、晴佳は頷く。

「呼んだよ。中学生以上の万引きは警察を呼ぶことにしてるから」
「今後のためにちゃんと犯罪だってわからせるんだって言ってましたもんね」
「青いよなー。理想ばっか追ってると挫折したときにつらいぞ」
 諒の揶揄する口調に晴佳はむっとする。

「大人が理想を追求しないと世の中は悪くなる一方だよ」
 晴佳はレタスを口に入れた。噛むと、なんだか青臭い苦みを感じた。
「一理ある」
 言って、彼はハンバーグに添えられたショートパスタを美しく口に運んだ。

「海戸くんとこは万引き少なそうだね」
「そっちよりはな。やられたら一発がでかいけど」
 彼の店は単価が高いために被害額も高額となる。

「ごめんね、つい愚痴が出て」
「大丈夫です。お店の話を聞くのは好きなので」
 謝罪に皐月の笑顔が返って来た。晴佳は目をぎゅっと閉じて胸の前で拳を握る。

「皐月ちゃんをお嫁さんにしたい! 家事もできて気立てもよくて、完璧!」
「望月さん、彼氏は作らないんですか?」
「無理だよ、この仕事に出会いなんてないし」
 晴佳は手をひらひらさせた。恋人がいる同僚の存在は無視だ。

「お前のとこならまだ可能性あるだろ。俺なんて紳士靴だぞ」
 諒の絶望した顔に、晴佳と皐月は笑った。
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