亡国の騎士は勝気な皇女殿下をご所望です──剣を捧げたその日から、貴女は俺のすべてです
そして私は、その剣を皇太子の間に置かなければならなかった。

「……お飾りの剣、か。」

どれだけ手にしても、決して重くはない。

鋼の重みも、血の記憶も、この刃には刻まれていない。

この剣に託したはずの祈りすら、時とともに薄れていくようで――

私は思わず、自嘲をこめて呟いた。

「私の宣誓は、こんなにも軽いものだったのか」

壁に設えられた台座に、静かに剣を収める。

カシャン、と乾いた音が響いた。

そのまま、私は窓辺へと歩を進める。

夜の空には、雲の隙間から月が浮かんでいた。

淡く、けれど揺るがぬ光を放って。

「月でさえ、飾り物ではないというのに……」

誰に届くこともない、虚しい独り言だった。

それでも私は、その光から目を逸らすことができなかった。
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