結婚当日に夫が浮気したから、ヤケになって愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 アーヴィンはテストのたびに私に負けるのが悔しくて、何かとまとわりついていた。教養を高めるためだと、美術館に共に足を向けたこともある。つまり、切磋琢磨した仲なのだ。だからよきライバルだと思っていたのだが。
「だから、愛人。募集中なのだろう?」
 アーヴィンが私の耳元でささやいたその言葉は、シオドアたちの耳にも届いていたようだ。リンダの「王弟殿下が?」とぼそりと呟く声が聞こえた。
「王弟という立場はわりと自由だからな。だが、これでも一応王族だ。地位はある。金もある。どうだ? 今ならお買い得だと思わないか?」
 その言い方に、私はくすっと笑みをこぼす。
「それに、知っているか? この国では、王族にかぎって略奪婚が認められている」
 ただしそれは『本当に愛する者と出会ったときに限る』とされており、相思相愛が絶対条件だ。ただの横恋慕では認められない。
 数百年前、この国の王子が運命の女性と出会うのが遅く、彼女がすでに結婚していたことが発端だ。王子はその事実に嘆き悲しみ、自ら死を選んだ。女性のほうは、婚家で冷遇されており酷い生活を送っていた。それでも離婚できずにいたのは、やはり彼らの家の関係によるもの。相手の女性も王子の好意には気づいており、いつかはこの酷い生活から救い出してくれるのではないかと期待していた矢先のできごとだったらしい。
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