結婚当日に夫が浮気したから、ヤケになって愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
「そうだね。僕は君と夫婦になった。君は僕の妻。だからリンダは僕の愛人だ」
 私の感覚がおかしいのだろうか。結婚したその日のうちに、妻に愛人を紹介する夫がどこにいるというのか。
 まぁ、ここにいるが。
「奥様。シオドア様を叱らないでください」
 まるで自分は悲劇のヒロインとでも言いたげに、胸の前で手を組んでリンダが訴える。
 なるほど。彼がリンダを愛人に選んだ理由がよくわかった。見た目が私と正反対なのだ。
 焦げ茶の髪はゆるやかにウェーブがかかっており、くりっとした碧眼が愛らしい。ぷっくらとした唇にふわふわとした頬は、つんつんとつついてみたくなる。
「リンダさん。でしたっけ?」
 腕を組んだ私がリンダの名を口にしただけで、彼女は雨に打たれた子犬のように身体を震わせた。きっと、こういうところが彼の庇護欲を刺激したのだろう。
「は、はい……」
 大きな瞳に涙をためている。
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