結婚当日に夫が浮気したから、ヤケになって愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 私は怒ってなどいない。ただ彼女の名を呼び、事実確認をしたいと思っただけなのに、なぜ私がこんな目に合わなければならないのか。やり場のない苛立ちが渦巻く。
「私は怒っておりません。もともとこういう顔つきなの」
「そうなんだよ、リンダ。イレーヌはきつい顔つきをしていてね。その容姿だって魔女のようだ」
 シオドアは何かあるたびに私の容姿を魔女のようだと揶揄する。漆黒の髪に琥珀色の目。絵本に出てくる魔女の姿そのものだと。
「だから僕も萎えて仕方ない」
 コホンと私は空咳をした。いったいナニが萎えるというのか。それは確認してはならない。しかし、屈辱と虚しさに襲われた。
「それで旦那様。これはどういう状況なのでしょうか。私と結婚したその日のうちに、愛人と愛を深めていた。そういうことで合っておりますか?」
「さすがイレーヌは賢いね。学年首席だっただけのことはある。さっきも言ったように、君の顔は僕の好みではなくてね。萎えるんだよ。だから、リンダとの間に子どもができたら、その子をポーレット公爵家の跡取りにしようと思っているんだ」
 つまりこの夫は、初夜の儀すら放棄するというわけだ。それならそれでかまわない。
 永遠の愛を誓い合ったといっても、私たちの関係は表面上のものだけ。お互い、好き合って結婚したわけではないのだから。
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