悲劇のセイレーンにささやかな愛を
「次は何が欲しい?」
『服とか。でも私お金持ってないよ?』
「それは安心して。遺産とかで大量にある」
さっそく、買った手帳にペンで言葉を記してくれる澪。
確かに、これは話しやすいな。
よほど慣れているのか、書くスピードも速い。
『ここに行ってもいい?』
ちょい、と服を引っ張ってきたかと思うと、サッと手帳を出された。
……今の一瞬で書いたのかよ。すご。
有名なブランドの店に行くと、彼女はカゴを取って店内を見まわし始めた。
『何から見た方がいいのかな』
困り顔でそう伝えてくる彼女に、クスリと笑いを漏らした。
「確かに、何も持ってないもんな。順番に回るか」
トップス、ボトムス、パジャマ、部屋着、靴下、靴、帽子、鞄……。
店のほとんどのエリアで何かしらを選び、カゴに入れていく。
案の定一つでは足りなくなったので、もう一つカゴを持ってきたほどだ。
『下着エリアのとこ、行ってきていい?』
モジモジと恥じらいながらそう聞いてくる澪。
そうか、下着買ってなかったな……じゃなくて。
デリカシーなさすぎだろ、俺。