悲劇のセイレーンにささやかな愛を



ニコニコと微笑む彼女に、俺は迷いなくそのコップをカゴに入れた。

上機嫌なのか、ルンルンと楽しそうに戻って行った澪を見ていると、そこへ寄って行った一人の男。

俺ははっとしてその男を注意深く見る。

すると、笑顔で品物を見始めた澪の方へ歩いて行き、次第に二人とも見えなくなった。


……まずい、こんなことしてる場合じゃねーだろ。


俺はカゴを置き、早足でそこへ向かう。

息切れしながら澪がいた場所を覗くと……

澪が、男に腕を掴まれていた。



「なんで黙ってんの?安心して、怖くないからさ〜」

「……っ」

「君、本当に化粧してないの?すごく綺麗だね」



そう言って彼女の顔に手を伸ばしたのを見て、何かが切れた。


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