悲劇のセイレーンにささやかな愛を
もう既に過半数が澪のことについて。
「……ちっ」
「っ、」
思わず小さく舌打ちすると微かに震えた彼女の肩。
「ごめんな、すぐ職員室行こう」
喧騒から逃げるように靴を履き替え、職員室の扉を叩いた。
「おー、片桐に水流園、昨日ぶりだな」
俺と澪のクラスの担任、堀内隼先生。
愛称は『ほりじゅん』。30代の若い男の先生だ。
「ほりじゅん先生、澪を目立たなくするにはどうしたらいいと思いますか」
「……は?」
「このままじゃ澪が可哀想です」
あんな好奇の視線に晒されて、耐えられるはずもない。
「お前過保護すぎないか?」
「……あの状況を見たら誰だってそう思います」
変な目で見られ、思わずグッと眉根を寄せた。