悲劇のセイレーンにささやかな愛を



「まぁ、それはそれとして。今は水流園に説明するのが優先だろ」

「はいはい。澪、また後でな」



頭を撫でると、フワリとした笑みを浮かべた。

俺もつられて微笑んでから、教室に歩き出す。



「ねーねー紫水っ」

「彩芽……離れろ、凰牙に殺される」



後ろから彩芽が笑顔で話しかけてきた。
その後ろには真顔でこっちを見ている彼氏が。

彩芽は誰彼構わず距離が近い。

そんな彼女を持つ凰牙はいつも彩芽の護衛をするように近くにいる。

この前「虫を退治してきた」と無表情で報告してきた時は背筋が凍りつくかと思った。

幸いまだ殺人にまでは行ってないらしい。まだ。



「さっき一緒に歩いてた子誰⁉︎」

「は?」

「めっちゃ可愛くない⁉︎ さては……」



はぁ、とため息をついた。
今日何回これ言われるんだろうか……
 


「妹ちゃん⁉︎」



思考回路が止まった瞬間だった。


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