悲劇のセイレーンにささやかな愛を
「秋斗。悪いこと言わないから離れろ」
「今日の紫水いつにも増してこえーよ!なぁ澪ちゃん」
「軽々しく名前を呼ぶな」
『いいから!嬉しいし。内海くんだよね?』
「えー、俺が澪ちゃん♡って呼んでるから秋斗くん♡って呼んでよ」
ニコニコと話しかけている秋斗。
「語尾のハートマークは何?お前はいつにも増して気持ち悪いね」
「いつも気持ち悪い?俺が⁉︎ 心外だなー」
『紫水、秋斗くん、喧嘩はやめて!』
言い争っていた俺らの間にノートを差し出してきた澪。
上目遣いの懇願は全男子落ちるだろ。
「っ、ごめんな澪、怖がらせたよな」
「……紫水のが気持ち悪くね?なんだコイツ」
驚愕している秋斗をあしらいながら澪に微笑んだ。
「ていうか!私も聞いてたけど、家ってどういうこと⁉︎」
「紫水……お前なにして」
人混みを分けながら俺らの机の前に立った彩芽と凰牙。
彩芽はともかく、凰牙のその表情はなんだ。
いつも無表情の癖に。眉を顰めるな。
「色々あったんだって。とりあえず昼休み終わるぞ」
そう言い終わった直後。
昼休み終了を知らせる鐘が鳴り響いた。