悲劇のセイレーンにささやかな愛を



「だって良い気しないだろ」

「なんで?」

「なんでって……」

「そこは素直に好きだからって言えよ〜」

「……お前、マジでぶっ飛ばす」



こえー、やっぱ澪ちゃんが絡むとこえー、と騒いでいる秋斗をよそに俺は考える。


澪には幸せになってもらいたい。

今まで数々の告白を阻止してきたのは事実だし、俺が嫌だと思ったからしてきたことだ。


でもどうする?

もし澪が告白されて、もしそいつが澪の好きな人で、もし付き合うことになったら。

澪はきっと楽しいし、幸せなはず。

それを俺が今まで、遮ってきたのだとしたら。


……ああ、澪に好きな人がいるなんて、考えもしなかった。

教室に入ると、澪と目が合った。

かと思ったらすぐに逸らされ、困惑する。


……そういえば、今朝もなぜか冷たかったし、避けられてる気がする。

もしかして、澪は好きな人がいるのか。


……好きな人がいたら?

そう考えれば全て辻褄が合う。

急に俺と話さなくなったのも、近づかなくなったのも、目を逸らされたのも。

好きな人がいるのに他の異性と話したくない。

普通、そう思うよな。


俺は顔を背け、澪の隣の席に座った。

きっと俺は、必要以上に澪に近づいてはいけない。




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