愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「す、すみません。あのときは、修理に出せばいいかなと思って」
言い訳にもならない言葉を口にしながら、私は肩をすくめた。
いたたまれなさに耐えかねて、視線を落とす。
すると彼はすべてを察した様子で、「そういうことか」とつぶやいた。
私が、彼に気を使って嘘をついたことを気づかれてしまったのだろう。
「そ、それで……おふたりは、どういうご関係なんですか?」
気まずくなった私は、さりげなく重光さんに別の話題を振った。
すると重光さんは彼を見ながら、思い出話を交えつつ、私の問いに答えてくれた。
「航は俺のツレ──水瀬の息子なんだよ。小さい頃は、一緒にキャンプや釣りなんかに行ったりしてさ」
ツレというのは、重光さんと仲のいい友人のことだ。
つまり彼の本名は、水瀬航。
話を聞くと、彼……水瀬さんのお父さんはシーガーデンの常連さんで、私も何度かお会いしたことがあった。
「ほら、うちは子供がいないだろ。だから航のことは、昔からよくかわいがっててさ」
水瀬さんも重光さんにかわいがられていた自覚があるらしい。
水瀬さんのお母さんと祥子さんも仲がいいそうで、本当に家族ぐるみの付き合いをしていたようだった。
「でも、航が防衛大入ってからは、会う機会も減ってな〜」
「防衛大学? って、たしか自衛官になるための学校ですよね?」
「うん。将来の自衛隊幹部を育てるための学校で、航はそこで訓練を受けて海上自衛官になったんだ」
続けられた会話の中で、水瀬さんの華々しいキャリアがひもとかれていった。
水瀬さんは防衛大学を卒業後、海上自衛隊幹部候補生学校で幹部自衛官としての基礎訓練を受けたという。
その後、約二年間潜水艦に配属され、地方の基地勤務を経て、護衛艦に気象海洋員として乗艦することになったそう。
彼が乗っている護衛艦は、現在、彼の所属する基地に停泊中とのことだ。