愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「そっか。俺たちは似た者同士で、相性がいいかもしれないな」
優しい声で囁かれ、胸の鼓動が落ち着きを忘れて騒ぎだす。
雨は静かに降り続けているのに、私の心だけが大きな水たまりを見つけた子供のように、浮かれていた。
「でも、これだと外に出るのは厳しいかもしれないな」
ふたたび空を見上げた航さんがつぶやく。
「歩いているうちに、雨が上がる可能性もあるけど」
予測不能の天候に、航さんも戸惑っている様子だった。
……どうしよう。
私は言おうか言うまいか迷ったあと、意を決して口を開いた。
「あの。事前にお伝えしそびれていて、本当に申し訳ないんですが」
「ん?」
「じつは私……超、雨女なんです」
率直に告げると、航さんは「ん?」と小首をかしげ、意味がわからないという顔で固まってしまった。
ああ。いい年して、くだらない迷信を信じるなんてと、呆れられてしまったのかも。
でも、私が雨女体質というのは本当なのだ。
「昔から、イベント事や大事な日に限って、雨が降るんです」
そう、今日のように晴れ予報でも、どこかのタイミングで必ず雨が降ってくる。
「イベント事や大事な日って、たとえば?」
真面目に聞き返されて、私はこれまでの経験を頭の中に思い浮かべた。
「たとえば、子供の頃なら初めての運動会、小学校と中学校の修学旅行も雨でしたし、入試の日も雨でした」
逆に私が、風邪を引いて出席できなかった高校の修学旅行は見事に晴れた。
「あとは、最後の卒業式の日も雨でしたし、短大を卒業してから勤めた会社の出勤初日も雨で、今の家に引っ越してきた日も雨が降ってました。それに──」
「それに?」
「……初めてお付き合いした彼との初デートの日も、ひどい雨でした」
すぐそばで、雨音に重なるように誰かが傘を開く音がする。
また、嫌な記憶が蘇り、私はごまかすように曖昧な笑みを浮かべた。
「もちろん、もともと雨予報の日もありましたけど。でも、ほとんどが晴れ予報だったのに雨になったんです」
まるで、今日みたいに。言葉を続けたら航さんが、「へぇ」と低い声で相槌を打った。