愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「航さん?」
不思議に思って見上げると、なぜか航さんは不機嫌な表情をして腕を組む。
「つまり、初カレとの初デートは、陽花にとって大事な日だったんだ」
「え?」
思いもよらないことを言われて、私は何度か目を瞬いた。
「でも、それでいくと今日も、陽花にとっては大事な日ってことになるな」
今日も私にとっては大事な日──。
改めて言われると、妙に意識してしまい、徐々に頬が熱を持った。
たしかに昨日は仕事が終わって帰ってきてから、今日のお出かけに何を着ていこうかさんざん迷った。
結局、服はお気に入りのネイビーのワンピースにして、コーディネートをまとめたけれど。
朝もアラームが鳴るより先に起きてしまったし、今日を待ち遠しく思っていたのは間違いない。
「陽花って、本当に俺の興味をくすぐるよな」
顔を赤くして固まった私を見た航さんは、喉の奥で笑い声を転がした。
ただ笑っているだけなのに目が離せなくて、また心拍数が上がってしまう。
「私は、興味をくすぐってるつもりはないんですけど」
「いや、仮に今の話が事実なら、膨大なデータや情報をねじ伏せる陽花の雨女体質──じっくり解明したくなる」
艶のある声で囁かれて、胸の奥がざわめいた。
私の雨女体質を解明したいって、それは船の安全を守る気象海洋員の性みたいなことだよね?
頭ではわかっているのに、琥珀色の瞳の奥に秘めた熱のようなものを感じてしまう。
航さんに見つめられるほど、私の体もじわじわと侵食されて熱くなった。
「とりあえず今日は予定を変更して、シティマークプラザでプレゼント探しをするか」
黙り込んだ私の代わりに、航さんが落ち着いた声でそう言った。
シティマークプラザは、超高層ビル・シティマークタワーの足元に広がる、地下一階から五階までの複合商業施設だ。