愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「晴れてると、機械の機嫌もよくなる気がするんだよなぁ」
「それ、機械じゃなくてお前の機嫌の話じゃないのか?」
思わず切り返すと、村井は「バレたか」と言って肩をすくめた。
俺はまた軽く笑って、もらったばかりの缶コーヒーへと目を落とす。
つい……思い出してしまうのは、陽花のことだ。
陽花とは、『カフェは次回の楽しみに』って、約束したんだよな。
それは数日前、重光さんの還暦祝いを買いに行った際に交わしたことだ。
それ以外にも、スケジュールを合わせてプレゼントを一緒に渡そうという話になっていた。
俺から陽花に提案したんだ。彼女の、重光さんと奥さんの祥子さんに対する気持ちを知ったら、胸の奥が熱くなって……。
「午後は? またデータ整理?」
つい考え込んでいた俺は、村井に声をかけられて我に返った。
あわてて視線を上げると不思議そうに俺を見ている村井と目が合い、妙な気恥ずかしさに襲われた。
「いや、午後は、次の航行に向けて気象ブリーフィングの準備をする」
「は〜、ご苦労さん。まぁでも、航行も晴れ男のお前がいれば、雨知らずで安心だな」
「雨知らず、か」
つぶやいたあと、俺は無意識のうちに缶コーヒーを持つ手に力を込めた。
村井らしい軽口だ。だから俺も、いつもなら気圧配置を引き合いに出して、さらっとあしらっていただろう。