愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「あー、やっぱりヤバイな」
気がつくと、彼女のことばかり考えている。そんなことまで打ち明けたら、村井はひっくり返って動かなくなってしまうかもしれない。
「航〜、お前、忙しすぎて疲れてるんじゃないか? 悩みがあったら聞くから、いつでも言えよ」
「悩み、ねぇ」
そう言われて、今、思い浮かぶことはひとつだった。
「……付き合ってもいない男から、突然ブレスレットを渡されたら、女の子はどう思うかな?」
「は?」
「冷静に考えたら、っていうか、冷静に考えなくても重いよなぁ」
俺が短い息を吐くと、村井はひっくり返らずに固まってしまった。
じつは、あれからずっと気になっていたんだ。ブレスレットのことを、陽花は実際のところはどう思ったのかって。
特別な意味があったわけではない。彼女に伝えたとおり、彼女に似合うと思ったから贈りたかっただけだった。
「喜ぶ顔が見たいって、思ったんだよな」
「って、それ、お前の話?」
「ん?」
「お前……まさか雨女って、好きな子でもできたのか!? で、その子にブレスレットをあげたってことだよなぁ!?」
俺の話を聞いた村井は、予想以上に食いついてきた。
そのあわてっぷりがなんだか面白くて、つい口角が上がってしまう。
「まあ、お前がそう思うならそれでもいい」
「おいおい、航! お前、そういう話は昨日の夜にできただろ!」
村井の言うとおり、機会があれば相談してみようとは思っていた。
けれど、タイミングというものがある。昨日どころか、完全に今でもなかったな。
「なんで昨日言わなかったんだよ!」
「昨日は仕事の話が主だっただろ」
「そんなこと言ったら、いつだってそうだろ! 俺らが仕事の話ばっかりしてるのは、浮いた話のひとつもないからだろうが!」
すっかり興奮している村井は、回り込んで俺の足を止めようとしてくる。