愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「陽花は今日みたいに、普段も酒は飲まないのか?」
「え? あ……はい。家でも外でも飲まないです」
「酒が苦手か、弱い感じ?」
「いえ、その逆で……。私、いくら飲んでも酔わない酒豪なんです。だから一周回って、お酒はもういいかなって思っていて」
思い出すのは数年前のことだ。以前勤めていた会社で飲み会に誘われたとき、自分がいくらお酒を飲んでも何も変わらないことに気がついた。
そして気づいてから、どれくらいで酔えるのか試してみたくなり、自宅でひとり晩酌会を開いてみた。
その結果、やっぱりどれだけ飲んでも何も変わらないことがわかった。積み上がった缶ビールの空き缶を見た私は、お金ももったいないし、酔えないならあえてお酒を飲む必要もないか──という結論に至ったのだ。
「だから私、じつは雨女体質と酒豪体質の二刀流なんです」
真面目な顔で説明すると、航さんは一瞬目を丸くしたあと、ハンドルに顔を伏せて笑いだした。
「くっ……は、ははっ! 二刀流って、そんな堂々と言われても。というか、酒豪って意外すぎる。ほんと陽花って面白いな」
肩を揺らしている航さんを見ていたら、私の体からも少しだけ力が抜けた。
「そうでしょうか? あ、でも、お酒を飲まないのは、健康に気を使ってということもありますよ!?」
「まぁ、それも大事だよな。でも、今日は俺たちに遠慮してるのかなって思ってたから、そうじゃなかったみたいで安心した」
ふっと表情を和らげた航さんは、顔を上げるとアクセルを踏み、ゆっくりと車を走らせ始めた。
ヘッドライトが夜を切り裂くように伸びて、海沿いの道を照らしていく。
明かりのない海は黒く静かで、まるで眠っているみたいだった。
……笑っている航さんを見たせいか、緊張感が解けた気がする。
でも、またすぐにふたりきりなのを意識してしまい、落ち着かない気持ちになった。
きっと航さんは、緊張も雑念も抱いてなんかいないんだろうな。
そんなことを考えた私は、つい、運転中の彼の横顔を盗み見てしまう。
ところがすぐに気づかれて、赤信号で止まったと同時に「どうした?」と聞かれてしまった。