愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「そこの駐車場、入ってもいい?」
「は、はい。使ってないので、ご自由にどうぞ!」
咄嗟に答えると、航さんは手際よくバックで車を駐車スペースに滑り込ませた。
次の瞬間、目の前を後続車が通り過ぎていく。それを見送った直後、航さんは車のエンジンを静かに切った。
「つけっぱなしだと、近隣の家に迷惑だろうから」
時刻は二十三時四十五分。まだ明かりがついている家もあるけれど、ほとんどが夜の密やかさの中にいる。
「それで、話の続きは?」
そっと促された私は、どこまで話しただろうかと考えるためにまぶたを閉じた。
ああ、そうだ。この家は、ひとりで住むには広すぎるっていうところまでだ。
「す、すみません。話の続きは、特にないかもしれないです」
「え?」
「この家はひとりで住むには広すぎて、掃除をするのが大変、って言いたかっただけなので」
まぶたを開けた私は、申し訳ない気持ちで苦笑した。
住んでみてわかったけれど、実際のところ、おひとりさまに4LDKの庭付き一戸建ては手に余る。
特に夏場はすぐに庭が雑草だらけになるので、こまめに抜かないと、あっという間に森になってしまうのだ。
「もちろん、贅沢な悩みだってわかってるんですけど。普段使わない部屋も換気をしないといけないし、結構やることがたくさんあって」
眉根を寄せて小さくると、また航さんがハンドルに手をのせたまま笑いだした。
「ふ……っ、ははっ」
「航さん?」
どうしたんだろう。私、また何か変なことを言ったかな。
思わず首をひねると、彼は私を見て眩しそうに目を細めた。