王子姫は旦那様に可愛いと言われたい

可愛いものデート

 それから十日後。私と真尋は、バラ園を訪れていた。

「わあ……!」

 庭園の至る所では、バラが満開となっている。あまりの美しさに、私は歓声を上げた。

「姫香、階段だから足元に元気をつけて」

「大丈夫だって……きゃ!?」

 履き慣れないヒール靴でふらついてしまい、庭園の入口近くの石階段から落ちそうになる。

(落ちる……!)

 しかし、地面に倒れ込むより先に、前を歩いていた真尋が抱きとめてくれた。

「っ、ごめん……!」

 熱い胸板に額が当たり、胸がドキドキとうるさい。デートは始まったばかりだというのに、すでに恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。

「ほら、言わんこっちゃない」

「……っ」

 顔を上げると、困ったように笑う真尋と目が合った。

 私を立たせてから、真尋は手を繋いで歩き出した。

「真尋っ、その……もう大丈夫だから……」

「何言ってんだ。危なっかしいから、この方が安心だろ?」

「さ、さすがに平らなとこではコケないってば……!」

「あー、はいはい。分かった分かった」

「分かってないでしょ……!」

 そんなやり取りを繰り広げながら、私たちはバラ園の中にあるレストランへと足を進めた。

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