王子姫は旦那様に可愛いと言われたい
 陸上を引退してからは、ショートヘアだった髪をミディアムショートぐらいには伸ばすようになったものの、女の子らしいロングヘアは気恥ずかしくて、それ以上伸ばす勇気が持てないでいる。

 プライベートでスカートをはくことも多いけど、飾り気のないロングスカートが精一杯だ。

「前から思ってたけど……姫香ってさ、ああいうの好きだよな」

「え……えっ!?」

 看板の中の花嫁に憧れの眼差しを向けていると、真尋は私に言った。

「花とか、ピンクとか。昔から、バッグには何かしらキーホルダー付けてるし」

 看板を指さしながら、真尋は続ける。図星をつかれ、私はすっかり顔を引き攣らせていた。

「ち、違……っ! いや、たしかに、ああいうのは素敵だとは思うけど……っ、私とはまるで別世界というか……」

 慌てて私は、片手をパタパタと振った。

 真尋は穏やかな性格だが、実は可愛いもの好きなんて知られたら、きっと笑われてしまう。そう思いながら、必死で首を横に振る。

「う……ウェディングドレスも……自分に似合うのを選ぶつもりだから……っ!」

「だったら、誕生日はああいう感じにしてみる?」

「え?」

 真尋の言葉の意味が分からず、ぽかんとする。信号はすでに青に変わっていたが、歩き出すことも忘れていた。

「可愛いもの尽くしのデート。ちょうど姫香の誕生日の予定、何も決めてなかったし」

 からかっている様子もなく、真尋はそう言ってのけたのだった。
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