王子姫は旦那様に可愛いと言われたい
「えーっと……、その、真尋くん?」

「ん、どうした?」

「どうしたじゃなくて……っ、これはどういうつもり!?」

 バラ園の近くにあるショッピングモールに移動した私たちは、とある女性向けのアパレルショップで、そんなやり取りを繰り広げていた。

 遡ること、数十分前。真尋のカッターシャツを購入した私たちは、夜ご飯の買い出しのために食品売り場へと向かっていた。

 その途中、とあるアパレルショップのマネキンが着ていた、ピンク色のワンピースが目に入った。

 花柄のシフォン素材で、胸元にはリボンが結ばれたデザイン。私に似合わないような、可愛らしい一着だった。

 ……が、しかし、真尋は何を思ったのか、私に試着してみるよう提案してきたのだ。

 ちょうどそのタイミングで、ショップ店員の方がやって来て、あれよあれよという間に、試着室に通されてしまったという訳である。

 試着室のカーテン越しに怒りをぶつけるものの、真尋はまったく意に介していないようだ。

「気になるなら、とりあえず着てみればいいだろ? 見た感じサイズもぴったりそうだし」

「に、似合う似合わないもあるでしょ……!?」

「それは二の次だろ。で、着替えれたの?」

「……う、うん」

「じゃあ開けるぞ」

 カーテンが開き、真尋と目が合う。

 正直、穴があったら入りたい気分だった。
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