王子姫は旦那様に可愛いと言われたい
「ウェディングドレスのお部屋は、こちらです」

 ドレスショップで、私たちはドレスルームに通された。

 ウェディングドレスがハンガーに吊るされて壁沿いに所狭しと並ぶ光景は、まるでお姫様のクローゼット。私は自然と、胸を高鳴らせていた。

「それでは、一旦私は失礼します。何かあれば、呼び鈴でお呼びください」

 そう言って、店員はドレスルームから立ち去った。

 このドレスショップでは、まず好きなドレスを選んでから、適宜店員のアドバイスをもとに選択肢をしぼっていく方式だ。

 それは人生で一度きりのドレスを、花嫁が好きなように選べるように、という配慮からだった。

「さて、まずは、どれがいい?」

「えーっと……」

 私が口を開きかけたところで、真尋のスマートフォンのバイブが鳴った。

「悪い、仕事の電話が入ったみたいだ。先に選んでて」

「うん、分かった」

「はい、もしもし……」

 通話しながら、真尋はドレスルームから出て行った。

 広いドレスルームにいるのは、私だけ。何だか、ワクワクしていた。

(見るだけなら……自由よね)

 早速私は、可愛い系統のドレスを見始めた。
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