王子姫は旦那様に可愛いと言われたい
 私が見ていたのは、ウエディングドレス専門店のホームページ。画面上には、純白のドレスからお色直しのカラフルなドレスに至るまで、様々なドレスが並んでいる。

 真尋と私が同棲を始めて早一年。彼からプロポーズされたのが、一ヶ月前のこと。そして私たちは今、挙式に向けた準備の真っ最中だ。

 来月、ウエディングドレスやタキシードの試着に行くのだが、待ちきれなくてこっそり下見していたのである。

「へえ、ウエディングドレスって色んなデザインがあるんだな」

「そ、そうなの……っ、どれも素敵で目移りしちゃって。ただ、似合う似合わないとかもあるし……私は背が高いから、こういうのがいいかなと思うんだけど、どうかな?」

 マーメイドラインのウエディングドレスを指さして、私は言った。

 そのドレスは、胸元から裾に至るまで繊細な刺繍が施されており、上品な華やかさのある一着だ。

 ただそれは、あくまで「似合うドレス」であって、「憧れているドレス」ではない。そう思った途端に、ちくりと胸が痛む。

「そうだな、ドレスのことはよく分からないけど、言われてみるとたしかに、姫香っぽいデザインだな。ただ……」

 私の頭を撫でながら、真尋は言葉を続けた。

「服は着てみないと分からないものだし、選択肢を絞らないで色んなデザインのドレスを着てみたらいいんじゃないか?」

 そう言って、真尋は穏やかに笑いかける。想定外のスキンシップに、私はつい目を丸くした。

「ちょ……っ、いきなりどうしたの?」

「頭のてっぺん、寝癖がついてたぞ」

「ウソでしょ!? 夕方にカメラオンでウェブ会議に参加してたのに……!」

「ウソだよ」

「ちょっと……!!」

「ははっ」

 からかわれたことに気づき、真尋の胸を拳で叩くものの、当然ながらビクともしない。

「姫香」

 突然、真尋は私を抱きしめて、唇を重ねた。
< 2 / 26 >

この作品をシェア

pagetop