王子姫は旦那様に可愛いと言われたい
「少しは落ち着いたか?」

「……ん」

 帰宅した私たちは、家のソファで二人並んで座っていた。

 とてもドレスショップに戻れる状況ではなかったので、ドレス選びは延期となった。

 店への連絡も、家までの車の運転も、全部真尋に任せっきりで、じわじわと申し訳なさが込み上げてくる。

 体操座りで俯いていると、テーブルになにか置かれる音がした。

「喉乾いたろ? はい、お茶」

「……ありがとう」

 テーブルにコップに入れたお茶を置いてから、真尋は私の背中をさすってくれた。

「店で月岡さんに会ったけど、まさか……何かあったのか?」

 真尋の声には、明らかに怒気が含まれていた。察しのいい彼のことだ。ゆまが原因なのだと、ある程度分かっているのだろう。

 しかし、私は首を横に振った。

 今日のことは、ぜんぶゆまが悪いとは思えなかったからだ。

 私が「可愛いくない」のは、事実なのだから。

「別に、大したことじゃないの。……っ、私には、可愛いウェディングドレスも、今日のワンピースも似合わないって、言われただけで……」

 喋っていると、一度止まった涙が再び流れていく。

 ゆまの姿が頭をよぎるたびに、小柄で愛らしい外見の彼女と、背が高くて可愛くない自分が、まるで正反対に思えてくるのだ。

(やっぱり私は、可愛い服なんて似合わないんだ)
< 21 / 26 >

この作品をシェア

pagetop