王子姫は旦那様に可愛いと言われたい
「っ、う、ひぐっ……、真尋のバカ、バカバカ……!!」

「待て、姫香、待ってくれ……違うんだ!!」

 私の顔に両手を添えて、真尋は言った。

「可愛いとか……思っても言える訳ないだろっ!!」

「っ!?」

 今まで見たことがないほどに、真尋は必死な表情となっていた。

 驚いて口を閉ざしていると、真尋の顔はだんだんと赤くなっていくのが分かった。

「……っ、その、なんと言うか……俺、普段から喋るタイプじゃないし……男兄弟ばかりの中で育ったから、女の子を褒めるのに慣れてないというか……」

「……」

 目を合わせることなく、赤面してしどろもどろになりながら、真尋は長々としゃべり続ける。

 いつもはストレートな物言いをする彼のこんな姿を見るのなんて、初めてだ。

「っ、そもそも……付き合ってほしいと言った時点で、可愛いと思ってるに決まってるだろ……っ、て、言わせんな!!」

 見事なまでに逆ギレしながら、真尋は言った。

 クールな表情はどこへやら。今の彼は、やたら子供じみて見えた。
< 23 / 26 >

この作品をシェア

pagetop