王子姫は旦那様に可愛いと言われたい
「だから……その、悪かった。許してくれ」

 好きな人に可愛いとは言ってもらえた。

 けれども……ワガママな私は、それではまだ納得できていなかった。

「……嫌だ」

「なっ……!?」

「もっとちゃんと可愛いって言ってくれないと、許さない」

 普段は真尋にからかわれてばかりで、私から仕掛けることは少ない。

 いっそ、とことん意地悪してやろう、と思ったのだ。

 わざとらしくそっぽを向いて、クッションで顔を隠す。「私はここから動きません」とばかりに、亀が甲羅に隠れるようなイメージだ。

「……あー、その、姫香。頼むから、戻って来てくれ」

「……聞こえない」

 縦長のクッションを握り、頑として譲らない私。

 そんな私を見て、とうとう真尋は観念したようだ。

 真尋は私の耳元に顔を寄せて、こう囁いた。

「姫香……大好きだし、可愛いよ」

「……合格」

「お前……!」

 クッションを外してみると、耳まで真っ赤になった真尋と目が合った。どうやら彼からすれば、言葉で愛を伝えるのは、堪らなく恥ずかしいらしい。

「ふふっ、可愛い」

「っ、行動で示す方が得意なんだよ」

「きゃ……!?」

 逞しい腕に抱きしめられ、唇が重ねられる。激しい口づけは、私の身体を一気に腑抜けにしてしまった。

「……っ、姫香、じゃあ次は、俺の番でいいよな?」

「……っ」

 この後、真尋の愛情をこれでもかと身体で証明されたのは、言うまでもない。
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