わななく羽
何でもないことのように彼はそう言ってニコッと笑い、私に右手を差し出してきた。真新しいマメがいくつもでき、
つぶれているものもあった。痛そうだ。
「まず、その手、手当しなよ。医務室行って」
「きみは大丈夫?」
「ん、まぁ」
「大丈夫じゃないんだね。行こう。医務室。いっしょに」
彼の「いっしょに」の言葉尻が跳ねていた。私の左胸がわなないていた。
初めて飛び立つ時のひな鳥のようだった。不安と期待がごちゃまぜになって心と背中が震えていた。
(「自分のさみしさをきみのため、とか言って正当化しているうちに」か)
誰かに弱さを見せるのにも勇気が要る。彼にはあって、私にはないもの。
(それでも彼は私を見守るつもりらしい。丁寧に、丁寧に)
だから、
その手のひらに応えることにする。
(彼が私に弱みを見せたいと思ってくれたから)
ジムの中のたくさんのひとたちが影絵になる。自然と寄り添ってゆっくり歩く。
(まだ飛べない。だけど、飛ぼうとしている私。飛べるポテンシャルがある私。本当は飛び立ちたい私)
見守られているのは悪くない。惚れられているのも悪くない。「いっしょに」って悪くない。
つぶれているものもあった。痛そうだ。
「まず、その手、手当しなよ。医務室行って」
「きみは大丈夫?」
「ん、まぁ」
「大丈夫じゃないんだね。行こう。医務室。いっしょに」
彼の「いっしょに」の言葉尻が跳ねていた。私の左胸がわなないていた。
初めて飛び立つ時のひな鳥のようだった。不安と期待がごちゃまぜになって心と背中が震えていた。
(「自分のさみしさをきみのため、とか言って正当化しているうちに」か)
誰かに弱さを見せるのにも勇気が要る。彼にはあって、私にはないもの。
(それでも彼は私を見守るつもりらしい。丁寧に、丁寧に)
だから、
その手のひらに応えることにする。
(彼が私に弱みを見せたいと思ってくれたから)
ジムの中のたくさんのひとたちが影絵になる。自然と寄り添ってゆっくり歩く。
(まだ飛べない。だけど、飛ぼうとしている私。飛べるポテンシャルがある私。本当は飛び立ちたい私)
見守られているのは悪くない。惚れられているのも悪くない。「いっしょに」って悪くない。