【マンガシナリオです】クールな彼の無自覚な求愛

後にも先にも

数日後。
○大学、講義室、昼休み
人のいない講義室で紗矢の作ったお弁当を食べる渉と紗矢。
渉「うん、うまい」
食べながら考え事をする紗矢。
石井の告白宣言のシーン。
紗矢(バレンタインに告白。つまり、神崎と連絡取える仲ってことだよね?)
チラッと弁当を頬張る神崎を見る。
紗矢(…私のこと好き?ってすごく聞きたい。ちゃんと大切にしてくれてるって分かってるのに、不安になってしまう自分がいる。はぁ…面倒な女になりたくないのに)
元気のない様子に気づく渉。
渉「一ノ瀬、大丈夫?」
紗矢「うん、大丈夫」笑顔
渉「…。」


2月
○大学
テストを受ける紗矢たちの様子。

家に帰るため、駅に向かう紗矢。
ワイヤレスイヤホンを耳につけている。
紗矢(とりあえず今はテストに集中…。…どうすればいいんだろう。告白をやめさせる?神崎に相談する?付き合ってこんなすぐに問題が起きるなんて…)


13日
○大学、夕方
体育館に向かう紗矢と玲香。手には大きな紙袋。
体育館、バレーサークルの練習風景。
紗矢「お疲れ様でーす!」
玲香「チョコの差し入れでーす!」
メンバーたち「おぉー!!」
みんなにチョコを配る2人。
藤野「2人とも、わざわざありがとうな!」
玲香「いえいえ!昨日2人で愛情込めて作ったので味は格別ですよ」
成田「今日もらった中で1番美味しそー」
2年「えっ成田、他にももらったん!?」
成田「もちろん」
2年「お前も藤野派か…ちくしょー」
3年「神崎はコレと別に一ノ瀬ちゃんからもらえるんだよな?くそー、羨ましい」
紗矢(サークルメンバーは全員、私たちの関係を知っている)
玲香「明日渡すの?」コソッと。
チラッと渉を見る。
紗矢「うん、その予定」


14日
○渉のアパート、昼過ぎ
紗矢「お邪魔します」手には紙袋。
紙袋から取り出した箱を渡す。
紗矢「はい、バレンタイン」
渉「ありがとう。開けていい?」
箱を開け中身を見る。
ガトーショコラのホールケーキ。
渉「めっちゃ美味しそう」
紗矢「口に合うといいんだけど」
渉「合うに決まってる。冷やして食べた方がいいよね?」
紗矢「うん」
冷蔵庫に入れにいく渉。時計を確認する紗矢。
紗矢「あのさ、今日…誰かに呼び出されたりしてる…?」
渉「え…あぁ、うん」
紗矢「相手…後輩の女の子だよね?」
渉「何で知ってるの?」
紗矢「前に話しかけられたことがあって、バレンタインに呼び出すって…」
渉「ごめん、何にも知らなかった」
紗矢「いや、私も言う必要ないと思ってたから」
渉「呼び出しに応じるつもりはないよ」
紗矢「え、それはだめだよ。ちゃんと行ってあげて。…私、待ってるから」
(信じて待つ事しかできない…)
渉「…じゃあ、一緒に行こう」
紗矢「え?」

○公民館
人のいない自習室に入る紗矢と渉。
紗矢(こんなスペースあったんだ)
渉「少しここで待ってて」
教卓の下にしゃがみ隠れる。
ドアから石井が現れる。
石井「すみません、わざわざ来てもらって」
渉「…話って何?」
石井「…あの、やっぱり私、先輩が好きです!彼女になりたいです!」
紗矢(返事が分かっていてもソワソワする)
渉「無理。俺、彼女いるから」
石井「ほんとにあの人と付き合ってるんですか?」
渉「うん」
石井「…先輩は、恋愛とか興味ないってずっと言ってたじゃないですか!」
紗矢(…私もそうだと思ってた)
渉「うん、ずっと興味なかった」
石井「ならっ…」
渉「だけど変わったんだよ。…俺が初めて人を好きになったのも、これから先好きなのも、一ノ瀬だけだから」
目を見開き驚く紗矢の顔。
渉「一ノ瀬は優しいから、俺に言わず1人で悩んじゃうんだよ。だからもう彼女に迷惑かけないで」
石井「…わかりました。…彼女さんに、ひどいこと言ってごめんなさいって伝えておいてください。じゃあ、失礼します」
会釈して立ち去っていく。
渉「…。」
紗矢の元へいき、しゃがむ渉。
渉「終わったよ」
放心状態の紗矢。
渉「…一ノ瀬?」
紗矢「なんか…驚いたというか、すごく嬉しくて…ありがとう神崎」
ふっ、と笑い、紗矢にキスする。ちゅ。
渉「大好きだよ」
顔を赤くする紗矢。
紗矢「…私もです」

○渉のアパート
帰宅後、2人でガトーショコラを食べている。
渉「美味すぎる」
紗矢「よかった」
渉「…あのさ、一ノ瀬」フォークを置く。
紗矢「なぁに?」
渉「これからは些細なことでも、なんかあった時は教えて」
紗矢(言わなかったこと怒ってるのよね…)
「ごめん…」
渉「ううん、謝んないで。…今回みたいに俺が関係してても、してなくても困った時とか大変な時は、ちゃんと相談してほしい。悩んでるのに無理して笑うのは、俺の前ではしてほしくないから」
紗矢「…わかった。今度からちゃんと話すね」
渉「うん」
(神崎の優しさに甘えるばかりじゃダメだけど、なんでも言い合える仲になれるなら私も嬉しい)

駅まで紗矢を送る渉。並んで歩く2人。
駅に着く。
紗矢「今日はありがとう」
渉「うん」
紗矢「じゃあまたね」
渉「あのさ…春休み、悟のとこ一緒に行かない?」
紗矢「え…」


数日後。
○大学、自習パソコンルーム
玲香「成田じゃん」
成田が座っている。学生が1人出て行き2人きりに。
成田「お疲れー」
玲香「神崎は?あ、紗矢とデートか」
成田「そーそー」つまらなそうな返事。
玲香「あら、神崎を取られちゃって寂しいんだ?」
成田「べつにー」
玲香「成田も彼女作ればいいじゃん。バレンタインたくさんもらったんだし、選び放題でしょ」
成田「んー、渉は恋愛を知らない上で興味なかったけど、俺は恋愛知った上で興味ないんだよねぇ」
玲香「なにそれ、恋愛にマイナスなイメージがあるってこと?」
成田「恋愛って常に気遣って疲れない?それにさ、自分のことも幸せにできないのに、相手のことまで幸せに出来ないじゃん」
玲香「…成田、真面目だね」
成田「え?」
玲香「大丈夫だよ。いつかちゃんと、そんなこと考える暇もないぐらい好きな人ができるから」笑顔。
成田「…。」


3月、春休み
13日
○キャンプ場、昼間
紗矢(ホワイトデーのお礼として、サークルのキャンプイベントに招待された)
コテージの横のテラスでバーベキューを楽しむ一同。
藤野「2人とも遠慮なく食ってな!」
紗矢、玲香「ありがとうございます!」

成田「不安になんないの?」肉を焼きながら。
渉「え、なにが?」
成田の視線の先、先輩たちに囲まれ楽しそうな紗矢と玲香。
成田「誰かに取られないかって。一ノ瀬ちゃんみたいなタイプ、狙われやすいだろ」
渉「…俺のライバルは1人だけだから」
成田「?」

夜になり、コテージで過ごすメンバーたち。学年ごとにコテージが分かれている。
3年のコテージ内。缶ビールやつまみがテーブルの上にある。
3年「もう4年生かぁー。はえーなー」
3年「そういや、サークルの引退っていつ?」
藤野「特に決めてなかったなぁ。秋の試合後か、卒業までいてもいいし」
3年「藤野は卒業しても練習参加してそうだよな」
3年「分かる!」
藤野「まぁ、自分で立ち上げたし思い入れるはあるよなぁ」
3年「残り一年、悔いのないように楽しもうな!」
藤野「おう!」

みんなが寝静まった頃、紗矢は1人外へ出た。
少し歩き、空を見上げる。
紗矢(わぁー!星が近くて綺麗!)
渉「何してんの?」
紗矢(!?)
後ろから来た渉の姿。
紗矢「なかなか寝付けなくて、散歩でもしようかと思って」
渉「夜に1人で出歩くのは危ないからやめて」
紗矢「…はい」
手を差し出す渉。嬉しそうに手を握る紗矢。

ベンチに座り話をする2人。
渉「これ…」
ポケットから取り出す。包装された小さなもの。
紗矢「もしかして、ホワイトデー?」
渉「うん」
紗矢「ありがとう、開けていい?」
頷く渉。開けると中からヘアアクセサリー(バレッタかヘアクリップ、普段使いできるデザイン)
紗矢「かわいー!神崎が選んでくれたの?」
渉「うん。髪伸ばしてるから似合うと思って」
紗矢「大切にするね」
渉「うん。…そろそろ戻ろうか」
紗矢「神崎っ…」
紗矢からキス。頬染まる渉。
紗矢(神崎のしてくれること一つ一つが私の幸せに繋がる)
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