【マンガシナリオです】クールな彼の無自覚な求愛

夏の触れ合い

7月
○朝、紗矢の家から駅に向かう道
紗矢1人で歩いている。
藤野「おーい!いっちー!」
後ろから声をかけられ、振り向く。

紗矢と藤野が並んで歩く。
藤野「来週の土曜、サークルメンバーでビーチバレーするんだけど、いっちーも一緒にやらね?玲香ちゃんだっけ?友達も誘ってさ」
紗矢「え、でも私、運動音痴だし」
藤野「大丈夫大丈夫!砂の上だとみんな下手くそになるから」笑顔。


次の日。
○大学の体育館、夕方
体育館の中を覗く紗矢。
紗矢(あれ、誰もいない。今日って練習日だよね?ビーチバレーに向けて練習したかったんだけどなぁ)
渉「何してんの?」
後ろから声がした。
紗矢「わぁ!!」
練習着姿の渉がいた。
紗矢「…いや、ちょっと練習を見に…」
渉「今日はいつもより早めに終わったから」
紗矢「あ、そうだったんだ。神崎は何で帰ってないの?」
渉「もう少し身体動かしたくて」
紗矢「そっか…。ねぇ!!ちょっとお願いがあるんだけど!」

○体育館内
コートに立つ2人。渉はバレーボールを持っている。紗矢は私服のまま。
渉「軽く投げるからレシーブしてみて」
紗矢「分かった!」
渉が紗矢にふわっと投げる。
すかっ、かすりもしない。
渉「…わざと?」
紗矢「本気だよ!!大真面目!」
ネット際に移動。
渉「ボール上に投げるからスパイク打てる?」
紗矢「なんかそれならいけそうな気がする!」
謎の自信。
渉が高くボールを上に。それに合わせてジャンプし、打とうとする紗矢。
ぽん、手のひらに当たらず頭に当たる。
紗矢「いたたた…タイミング難しいね」
渉「いや、タイミングもだけど…1回ジャンプしてみて」
ぴょん、その場でジャンプする紗矢。
渉「…。」
1センチほどしか浮いていない紗矢のジャンプ力の無さに唖然とする渉。
渉「多分、一ノ瀬は…」
紗矢「なに!?」
渉「脚のバネが死んでる…」
紗矢「えええ!?」リアクションでかい。
渉「…あはは」
紗矢(…笑った。え、この笑顔やっぱり…)
渉「砂の上なんてジャンプ難しいのに、一ノ瀬浮かないんじゃない?」
紗矢(そういえば、名前初めて呼ばれた気がする)

練習を終えた2人。
紗矢「いやぁ、久々にこんなに身体動かしたよ。練習付き合ってくれてありがとね!」
渉「腕見せて」
紗矢「えっ」
紗矢の腕を軽く持つ。
渉「初心者はアザが出来やすいから、帰ったら冷やして」
紗矢「あ、うん」
顔赤くなる。
(びっくりしたぁ)


次の週。
○海、朝
ビーチバレー当日。ビーチに集まる水着姿のサークルメンバーたち。上にTシャツやタンクトップ着てる人もいる。渉はTシャツを着ている。紗矢、玲香、夢は、ショートパンツにTシャツ姿。
藤野「よっしゃ!くじ引きでチーム決めるぞー。4人1組で、試合中好きにペア交代していいから」

同じチームになった紗矢と渉。残りのメンバーは3年と1年の男子。いつも以上にやる気のないオーラの渉。
紗矢「ねぇ、あからさまに諦めムード出さないでよ!たとえ、私が戦力外でも他の3人がいれば優勝の可能性あるよ!!」
男子1年「いや、優勝は無理だろ。見ろよ、あのチーム」
視線の先には藤野、成田、玲香、もう1人3年生がいた。
紗矢(玲ちゃん運動神経抜群だし、先輩たちも上手いし、たしかに強豪チームだ…)

紗矢のチーム初戦。
3年生「紗矢ちゃん、とりあえず上にあげてくれたら俺たちでフォローするから」笑顔。
紗矢「はいっ!ありがとうございます!」
(頑張らなくっちゃ)
気合いを入れる紗矢の姿を見てた渉。
試合開始。
一生懸命ボールをあげる紗矢の姿やスパイクを打つ渉の姿など。
ピーピー、終了のホイッスル。21-18で勝利。
紗矢(勝った!)
「やったー!」
メンバーとハイタッチする。最後に渉ともハイタッチ。
藤野たちの試合の様子。応援する紗矢。

準決勝。夢のいるチームと対戦。
紗矢(すごい!私がいるのにここまで勝ち進むなんて!)
試合開始。
初めは渉と紗矢のペア。相手チームが強く、紗矢はなかなかボールを拾えない。紗矢のミスをカバーするように、渉が次々とレシーブやスパイクを決める。
コートの外から見ている成田。藤野チームは決勝進出が決まっている。
成田(渉が本気出すの珍しいな)

1セット目は負け、2セット目の途中。3年の先輩と紗矢のペアが試合に出てる。
3年「紗矢ちゃん!」
高くトスを上げた。それに合わせてジャンプし、スパイクを打とうとする紗矢。
バシッ、手のひらにボールがあたる。
紗矢(やった!!)嬉しそうな顔。
ぐきっ、着地に失敗する。
渉「!!」
紗矢「いったぁ…」
足を押さえる。
玲香「紗矢!だいじょ…」
他の人が駆け寄る前に
すっ、渉が紗矢をお姫様抱っこする。周り驚く。
紗矢(え!?)
渉「応急処置してきます」

ビーチを離れ、駐車場に向かう。
紗矢「まっ待って、私、重いから!大丈夫、片足で歩けるから!」
恥ずかしさでパニック。
渉「…重くないの知ってる。一ノ瀬を運ぶの初めてじゃないし」
紗矢「え…」
(もしかして、前に倒れかけた時…)
「うそ!あの時もお姫様抱っこされてたの!?」
渉「あの時はおんぶ」
紗矢(おおお、おんぶ!?)
赤面する紗矢。

○駐車場
駐車場に着き、車のバックドアを開けた。クーラーボックスが積まれている。トランク部分に座った紗矢の足をしゃがんだ状態で確認する渉。
渉「たぶん軽い捻挫。早めに病院で診てもらって」
紗矢「捻挫…」
ガサッ、クーラーボックスを開け、中から保冷剤を取り出す渉。タオルを巻き、またしゃがみ足首を冷やし始める。
紗矢「なんかごめんね。チームの足手纏いな上に怪我までしちゃって…」
渉「砂の上なのに、ちゃんとボールに当たってたじゃん」
顔を上げ、軽く笑顔を見せた。ドキッとする紗矢。
紗矢(この笑顔を見ると、神崎がお守りの彼だったらよかったのにって思ってしまう)
少し切ない表情。

○ビーチ
紗矢(無事ビーチバレーは終了し、藤野先輩のチームが優勝。みんなはこれからバーベキュー。怪我人の私は途中退散することに)
紗矢「玲ちゃん、夢、抜けてごめんね。気まずかったら帰っていいから」
玲香「試合のおかげでみんなと打ち解けたから大丈夫よ!紗矢は安静にして早く治してね」
隣で頷く夢。
紗矢「ありがとう」
藤野「いっちー、家まで送る」
紗矢「ありがとうございます」
紗矢の肩を支えながら駐車場に向かう藤野。
渉「…。」
その後ろ姿を立ち止まり見ている渉。
成田「渉、行こう」
渉「ごめん、俺抜ける」
成田「え?」
スタスタと歩き出し、紗矢たちの方へ行く。
渉「あの…」
藤野、顔だけ振り返る。
藤野「おぉ、どしたー?」
紗矢(神崎?どうしたんだろう)
渉「俺が送ります。先輩は優勝したし、リーダーなんでここにいて下さい」
紗矢(え!?)
藤野「いや、でも…」
渉「大丈夫です。家、知ってるんで」
藤野「…わかった。気遣ってくれてありがとな!じゃあ、よろしく頼むわ」
軽く会釈する渉。
紗矢(ええええええーー!?!?)
 
○車内
無表情で運転する渉と緊張している紗矢を正面から見た図。車内音楽流れている。
ちらっ、運転する渉の横顔を見る。
紗矢(何考えてるんだろ…)
窓の外を眺める紗矢。

紗矢の家に着き、車を停めた。
紗矢「送ってくれてありがとう」
車から降りる。助手席の窓が開く。
渉「一ノ瀬のおかげで楽しかった。ありがと。じゃ、お大事に」
去って行く。
紗矢(最後の最後までずるいなぁ。どんどん神崎のこと知りたくなる)
< 3 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop