【マンガシナリオです】クールな彼の無自覚な求愛

不意に甘い

週明け月曜日。
○紗矢の家、玄関、朝
藤野「いっちーごめんなぁ!せっかく参加してくれたのにケガさせちゃって」
藤野が手を合わせて謝る。
紗矢「いやいや、私が勝手にくじいただけなので。むしろすみません、わざわざ…」
藤野「いいのいいの。今週は午前中講義ないから。ほら、行くぞ」
外に出ると藤野の車がある。
紗矢(今週は先輩が大学まで車で送ってくれることになった)
車に乗り込む2人。走り出す。

○大学、門の近く
車から降りた紗矢、助手席の窓が開く。
紗矢「ありがとうございました」
藤野「全然!じゃあ、授業頑張れよー」
手を振る紗矢、車去る。
紗矢が棟に向かいゆっくり歩く。片足固定されている。
女子「紗矢、大丈夫!?」
同じ学科の女子2人が駆け寄ってくる。
紗矢「あ、おはよう。捻挫しちゃって」
女子「そうなんだね。ほら」
肩を貸す。
紗矢「ありがとう」
女子「さっき送ってくれてたのって彼氏?」
紗矢「え?あ、違う違う」
女子「そうなの?イケメンだったよね」
女子「うんうん」
紗矢(相変わらずモテモテだなぁ、先輩)

○食堂、昼休み
紗矢と玲香が席に座り食べている。
玲香「うちの学科でも噂になってたよ」
紗矢「なにが?」
玲香「イケメンに車で送られてきたって」
紗矢「ええ!?」
玲香「どうせ藤野先輩でしょ?」
紗矢「うん、今週は朝送ってもらう約束になってる」
玲香「まだ藤野先輩が大学の人って把握してない子もいるからね。それにしても先輩も優しいよねー。いっそのこと、お守りの彼じゃなくて藤野先輩にしたら?」
紗矢「ないない。完全に私のこと妹だと思ってるもん」
玲香「そうかなぁ」

○講義室
全ての授業が終わり、帰る準備をしている紗矢。
藤野「いっちー!」
ドアから藤野が呼びかける。周りの女子がイケメンが現れ、頬を染め、驚いたり、あれ誰?と話したりしてる。
藤野が紗矢のもとに近寄ってくる。
紗矢「どうしたんですか!?」
藤野「俺、あと1時間後に帰れるんだけど、待てる?」
紗矢「え?」
藤野「車じゃないけど、支えながら歩いて帰った方がいいだろ?」
紗矢「そんな、朝だけでも迷惑かけてるのに、帰りまで申し訳ないです」
藤野「俺、今日バイトないし。はい、決まりな」
紗矢の頭に手を置く。
藤野「暑いから図書館で待っといて」
紗矢「…わかりました」

○図書館
紗矢(はぁー涼しい)
席に座り、本を読み始める。
しばらくして
渉「足、大丈夫?」声のみ
声の方を見ると渉。横の席に座ってきた。
紗矢「あ、お疲れ」
渉「痛み引いてきた?」
紗矢「若干ね」
渉の持っている筒状の図面ケースを見た。
紗矢「それって何が入ってるの?」
渉「製図で書いた図面」
紗矢「せいず?」
渉「家とか建物の…今度見せるよ」
その後も他愛ない話をする2人、主に紗矢が喋ってる。
紗矢「そろそろ美容院行かなきゃ」
渉は紗矢の髪を見る。
渉「…髪、伸ばさないの?」
紗矢「最近は伸ばしてないかなぁ。…長い頃もあったんだけど、前に付き合ってた人に、女の子らしいロングは似合わないって言われたの。もう別れたし、気にしなくていいんだけど…ま、長いと乾かすの大変だしね!あははー」作り笑顔
さらっ、渉が紗矢の髪に触れた。
渉「…似合うと思う、長いの」
ドキッとする紗矢。
2人の雰囲気を遮るように
藤野「いっちー、お待たせー。お、神崎も一緒か」
神崎「お疲れ様です」
藤野「お疲れ。じゃあ、行くか」
紗矢「あ、はい。…じゃあね」
藤野の肩を借り出て行く紗矢。


8月
紗矢(テストが終わり、夏休みに入った)
○野外フェス会場
紗矢はキャップ、玲香はバケットハット姿。
紗矢(玲ちゃんに誘われ音楽フェスにやってきた)
成田「とりあえず飲み物買おっかー」
玲香「熱中症にならないように気をつけないとね」
紗矢(玲ちゃんと成田は、ビーチバレーの日に連絡先を交換したらしい。バーベキュー中に同じバンドが好きだと判明し、フェスに行こうとなったが、なぜか2人きりではなく私と…)
成田「渉は何飲む?」
渉の姿。成田はキャップ、渉はバケットハット被っている。
紗矢(神崎を誘い、今に至る)

敷地内3箇所にステージが分かれており、お目当てのバンドの出るステージに移動する。玲香と成田は最前列にグイグイ進んでいく。
紗矢(2人ともすごい…)
紗矢と渉は後ろの方から見ている。
渉「前行かなくていい?」
紗矢「うん、遠くから聞くだけで十分楽しめるし。神崎は前で見なくていいの?」
渉「玄ほどのファンじゃないし、それに一ノ瀬を1人にするわけないじゃん」
キュンとなる紗矢。
紗矢(なんか今さらっと甘いこと言われた気が…)
バンド演奏が始まる。盛り上がるステージ周辺。
渉「このバンド知らないや」
紗矢「私も」
渉「キッチンカー見にいこうかな」
紗矢「今なら空いてるかもね」

キッチンカーが並ぶ。歩く2人。
元カレ「あれ…紗矢?」声のみ。
振り返ると元カレがいた。
紗矢(!!)驚く。
「…久しぶり」気まずそう。
隣にいる渉はそんな紗矢の様子に気づく。
元カレ「久々じゃん!元気?つーか、こういうの来るんだな。せっかくだし一緒に見る?」
紗矢「いや、そんな時間は…」困ってる。
元カレ「え、何でそんな冷たいわけ?そもそもさ、お前が…」
渉「元カレって、そんなに偉いの?」
紗矢(!?)
元カレ「は…?なに、お前。もしかして新しい男?」
渉「違う…友達」
紗矢(友達…)
元カレ「じゃあ、口出しすんなよ。おい、紗矢…」
紗矢の腕を掴もうとする。
すっ、元カレと紗矢の間に立つ渉。
渉「これ以上、一ノ瀬を困らせないで」
ぐいっ、紗矢の手首を握り、その場から去る。
元カレ「ちょ、おいっ…」

少し離れた場所で立ち止まり、手を離す。
渉「ごめん、でしゃばった」
紗矢「ううん。助かった、ありがとう。ごめんねー巻き込んで。…我ながら何であんな奴と付き合ってたのかって思うけど、最初は優しかったんだよねぇ…」
渉「…。」
バンドを聞き終わった玲香と成田が駆け寄ってくる。
玲香「紗矢!さっき山木とすれ違ったけど、絡まれてない!?」
紗矢「あー…絡まれたけど、神崎が追っ払ってくれた」
玲香「良かったぁ。アイツ散々紗矢にひどいことしたくせに、絡むとか…。神崎、ありがとね!」
渉「うん」
成田「なになに、一ノ瀬ちゃん悪い男と付き合ってたの?」
玲香「成田は黙ってて」
紗矢「別にそんな大した話じゃないよ。今まで付き合った人が何故かダメ男が多くて。浮気されたり、束縛激しかったり。さすがにDVとかはないけど。さっき会った彼は、モラハラタイプで、彼女は自分の所有物って感じだったから上から目線のひどいこと色々言われてさ。最終的に浮気されて別れたけど、その時も私が悪いみたいな言い方されて…」困り笑顔。
渉「…。」
玲香「ほんと思い出すだけでイライラする」
成田「そんなクズみたいな男ほんとにいるんだなぁ」
紗矢(クズな男を好きになったのか、私がクズにしてしまったのか…どちらにせよ男を見る目がないのは事実だ)

フェス終わり、夜。
玲香「今日はありがとうねー!」
玲香たちと別れ、渉と電車に乗る紗矢。

○電車内
座席に座った渉の横に少し距離をあけ座る。
渉「…何で離れてるの?」
紗矢「いや、その…汗臭いと思うから…」
(フェス終わりに汗拭きシートしたし、スプレーもしたけど、やっぱ気になる)
渉「汗臭いのは俺の方なんだけど」
紗矢「いやいや全然臭くないよっ!問題なし!ほんと大丈夫!!」
渉「そんな必死に言われたら逆に心配になる」軽く笑み。
すっ、真横に座り直した渉。
紗矢(!?)
渉「間に誰か座ると嫌だから」
顔が赤くなる紗矢。

家の最寄駅に着き、改札を出た紗矢と渉。
駅前に悟がいる。悟の斜め後ろ姿、全身。キャリーケース持ってる。声に気付き紗矢たちの方を向く、アップめ。その姿に驚く紗矢。
紗矢(え…お守りの彼!?)
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