宵にかくして



「(っ、どうしよう、)」



……実の兄たちに、この変装が通用するわけがない。
声や動作をどれだけ取り繕っても、ふたりを前にしたらただの"蒼唯咲菜"なのだから。



とうしようもなくて俯いてしまう私を気遣ってくれているのか、サナ、と穏やかな温度で名前を呼ばれる。そっと顔を持ち上げれば、メガネ越しにやさしく瞳を細める宵宮さんと視線がぶつかって、ずきりと心臓が痛む。



……ごめんなさい、宵宮さん。


あなたにも言えないことがたくさんあるのに、こんな状況でも守ろうとしてくれて、……降りかかるやさしさに簡単にうれしくなってしまって、ごめんなさい。


そうして、宵宮さん越しにふたりの姿を捉えて、……私の顔を見た瞬間、ふたりの動きがぴたりと止まる。



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