宵にかくして
『宵宮さんにご迷惑をおかけしないためにも、不和くんとはうまく距離を取ってがんばります……!」
よし、と手のひらをぎゅっと掲げる私を落ち着いた眼差しで見据えた宵宮さんは、咲菜、と丁寧に名前を紡いでくれるから、思わず視線が跳ねあがる。
『俺に、何?』
お手本のように口角を持ちあげて、ふ、と上目がちな瞳で捕らえる宵宮さん。宵宮さんにしては珍しい、ひやりとした温度の滲んだ声に、改めて自分の失言に気づく。
そ、そうだっ、以前同じようなことを言って、宵宮さんに気を遣わせてしまったのに……!
『っええと、……よ、宵宮さんに楽しいお話をお持ち帰りできるように、いっぱい楽しめたらなあって……!」
にこっと笑いかければ、宵宮さんは満足したように表情を緩める。やさしい顔つきに思わず見惚れてしまえば、不意に伸びてきた手のひらがそっと頭の表面を宥めるように触れて。