宵にかくして
ドアノブを回すと、……ガチャン、とちょうど隣からも同じ音が聞こえた。
もしかして、……お隣さんかな?
お引越しの挨拶をできるいい機会かもしれない、……年齢が近い女の子なら、あわよくばお友達になれるかも……!
玄関の全身鏡でいちおう前髪を整えて、そっと一歩を踏み出した、─────……その瞬間。
「、っ、ぇ、」
ひゅ、と息が止まる。
“彼"が視界に飛び込んできた瞬間、思わず小さな声が漏れてしまうくらいに、驚いてしまって。
向かい合うような形で、ただ見上げることしかできない私を、……彼は、不可解そうに、どこか疑うように見下ろした。
「お前、だれ」
─────……そして、冒頭にいたる。
冷えた視線で射抜かれて、きゅう、と胸の奥が締めつけられる。
"なんでお前がここに?"……そう問いかけられているみたいで、言葉を探そうにも、思うように舌が回らない。
……どうしよう、“彼"がお隣さんなんて、聞いてない……っ。
彼の黒目がちな瞳に映り込んだ自分の姿が、逃げ場のない真実を突きつけてくるみたいで、……ただ立ち尽くすことしかできない。