宵にかくして



黒曜石のような艶やかな髪が、光に照らされてさらりと揺れる。涼しげな瞳、すらりとした鼻梁、薄い唇、……左目の下の小さな泣きぼくろが、その静かな美貌にほのかな艶やかさを添えていた。


浮世離れした美しさを兼ね備える彼は、今この瞬間、あまりにも綺麗すぎる容姿を微かに歪ませて、こちらを見下ろしている……のだけど。



「っ、」


バクン、心臓が一際大きく音を立てる。
視線を合わせるだけで心臓が壊れてしまいそう。指先も震えて、頭も真っ白で。


どうしよう、なにか言わないと……っ。



「た、ただの地味子です……!」



……ぐるぐると混乱した思考回路のまま、咄嗟に出てしまったセリフに、時間差で顔が熱くなる。



な、なに言ってるんだろう私……。
地味なのはそれはそうだけど、彼が聞いてるのはそういう話じゃないのに。


おそるおそる視線を上げれば、訝しむようにすっと細められた瞳と目が合って、再び心臓が早鐘を打つ。


冷ややかな視線と声に、どうしよう……と思わず目を瞑った瞬間。





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