宵にかくして
思わず小さな声が漏れそうになったら、そのひとの大きな手のひらで口を覆われる。ふ、と抜けるような自分の吐息が恥ずかしくて、こくこくと頷くことしかできない。
数秒ほど至近距離で見つめ合ったあと、流れるように扉が閉じられた。
「(び、っくりした……っ)」
……がくん、と急に足の力が抜けてしまって、ずるずるとドア越しに座り込んでしまう。
─────……庇って、くれた?
「わ、桜ナイスタイミング。ちょうど訪ねようとしてたとこ〜」
「、なぎ、要件」
「巡回の引き継ぎ終了、裏門の鍵の予備の受け取りだけお願いしても?」
「……ん。場所は?」
「……21時に管理室」
……訪ねてくる時点で分かってはいたけど、お兄ちゃんたちと"ろう"と呼ばれている彼は知り合いらしい。
明るい声音からにこにことした表情が想像できるなぎ兄と、落ち着きのあるトーンで淡々としているかや兄、……変わってないなあ。