宵にかくして
「……だよ、さすがに起こそ」
「……あいつは……すぎる」
廊下の奥の方からふたつの足音と声が迫っているのに気づいて、……その聞き覚えるのある声に、今度こそ心臓が止まった。
─────な、なぎ兄とかや兄だ〜……?!
肩がびくりと跳ねて、思わずウィッグを抑えながら下を向いてしまう。
いま、今この瞬間だけはお兄ちゃんたちに見つかるわけにはいかないのに……!
まだ編入のことも言えてないし、私自身もこの状況もわからないことばかりで、……ずっとふたりに会いたいって思ってたけど、でも……。
「(どうしよう、どうしよう……っ)」
とりあえず部屋の中に……と震える指先でドアノブを掴もうとするよりも早く、─────……彼の指先が動いて、ぎゅ、と手のひらに冷たい温度が重ねられる。
「静かに。……そのまま、じっとしてろ」
耳元で低く囁かれた数秒後、ゆっくりと身体を引き寄せられて、視界がぐらりと揺れた。
気づいたら、彼の背に庇われる形で、部屋の奥に押し込まれていて。