宵にかくして
「、で、お前は不審者ってことでいいの?」
「っち、ちが……!あの、私、今日お隣の203号室に引っ越してきた者で……」
ドアに寄りかかったまま見下ろされるので、あわてて姿勢を正す。おそるおそる視線を合わせてぺこりと頭を下げれば、少し驚いたような表情を向けられた。
「……お前、だれ?」
さっきと同じ質問が投げかけられる。
……今度こそ、ちゃんと自己紹介を……!
「中等部2年、あおいえま、です……!さっきは、ほんとうにありがとうございました」
緊張からすこし噛んでしまったけど、ずっと伝えたかった感謝の気持ちを伝えられて、ほっとする。
……でも、まだ不審者の疑惑を晴らせたわけじゃない。
彼からしてみたら、ずっと空室だった隣の部屋に見知らぬ女(※しかも地味)が引っ越してきたら怖いだろうし、不審に思われるのも当然だ。
……ほんとうは、あまり宗英さんとの関わりがあることは公にはしたくないのだけど、誤解を解くにはこれしかない……!と、宗英さんからのお手紙を彼に渡す。