宵にかくして
この問題含め、当てられる問題全てが中学生に解かせるレベルではない。
それが先生の故意なのか偶然なのかは分からないけど、……今も現に「先生意地悪〜難しすぎるよ……」なんてひそひそ声が教室の色々なところから聞こえるし、変に注目を浴びないためにはこうするしかないのだ。
そして、授業の終わりを告げるチャイムが響く。今日はここまで、という先生の言葉で、一気に教室全体の空気が緩んだ。
……はあ、やっと午前中が終わった。
ほっと息をついていれば、隣の椅子がガタリと引かれる。素早く机の上を片付けた秋月くんは、カバンの中から取り出した数個の菓子パンとタブレットを持って立ち上がるので、思わず視線で追ってしまう。
「、視線がうるさい。何?」
鬱陶しさ全開の秋月くんの表情に、思わず苦笑いがこぼれる。ここまで真っ直ぐに嫌われていると、もはや清々しいというか、……ちょっぴり、傷つきはするけど。