フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
一方で失恋というワードに、山口は痛ましそうに眉を寄せて太田を睨んだ。
「だから、無理やり聞いちゃダメって言ったじゃん!」
そして楓の頭をなでなでした。
「そっか、そっか。つらかったね。そりゃいつもの通りではいられないよ。私もひとつやふたつみっつやよっつ身に覚えがある! つらいよね」
「本当にプライベートなことで迷惑かけて、すみませんでした。でも今日おふたりと話をしたらちょっと気が晴れました。失恋はしたけど、なにもかも無駄だったってことはないのかなって思って」
「そうそう無駄なことなんてなにもないよ。痛みを知って人は強くなれるんだからね」
一方で、太田の方はどうしてかほんのりと不可解な表情だ。
「失恋? 子リスちゃんが? うーん、それって確かな話?」
問いかけられて頷くが、それでも首を捻っている。
「どういうこじれかたしてるんだ?」
「あんたが何を知ってんのよ」
不可解な呟きに山口が突っ込んだあと、何かに気がついてキョロキョロとした。
「ちょっとごめん、店にマフラー忘れたっぽい。ちょっと待ってて」
山口が店に戻り、太田と楓ふたりになると、彼はなにかに気がついたように楓の後ろに視線を送りニヤリとする。どうかしたのかと振り返ろうとすると、すすすと近寄ってきた。
「太田さん?」
「子リスちゃん、いいことおしえてあげようか?」
「いいこと……ですか?」
「失恋の喪失感から早く立ち直る方法」
「え、そんな方法あるんですか?」
そんな方法があるのならぜひ知りたい。
興味を持って彼を見ると、どうしてかニマニマと笑っている。
「あるある、めっちゃ効果抜群だよ。おしえほしい?」
「はい、ぜひ!」
勢い込んでそう言うと、太田が指をちょいちょいとした。内緒話なのかと理解して、楓は耳を寄せる。
太田が意味深な表情で口を開いた。
「ズバリ、新しい恋をすることだよん。子リスちゃんさえよかったら……」
——そこへ。
「楓から離れろ」
唐突に誰かの声が割り込んできて、太田の声が途切れる。と、同時に肩をぐいっと太田と反対側に引っ張られた。
驚いてキョロキョロし、自分の背後にいる人物が誰かに気がついて楓は声をあげる。
「い、伊東さん⁉︎」
彼は威嚇するように太田をひと睨みしたあと、楓に向かって真剣な目を向けた。
「楓、太田はダメだ。俺のことが信用できないのはわかる。いや俺がこんなことを言う資格がないのはわかっているが、彼はダメだ。そして俺の話を聞いてほしい。謝らせてほしい」
突然現れただけでも意味不明なのに、いったいなんのことを言っているのかさっぱりわからず楓は目を白黒させる。
「だから、無理やり聞いちゃダメって言ったじゃん!」
そして楓の頭をなでなでした。
「そっか、そっか。つらかったね。そりゃいつもの通りではいられないよ。私もひとつやふたつみっつやよっつ身に覚えがある! つらいよね」
「本当にプライベートなことで迷惑かけて、すみませんでした。でも今日おふたりと話をしたらちょっと気が晴れました。失恋はしたけど、なにもかも無駄だったってことはないのかなって思って」
「そうそう無駄なことなんてなにもないよ。痛みを知って人は強くなれるんだからね」
一方で、太田の方はどうしてかほんのりと不可解な表情だ。
「失恋? 子リスちゃんが? うーん、それって確かな話?」
問いかけられて頷くが、それでも首を捻っている。
「どういうこじれかたしてるんだ?」
「あんたが何を知ってんのよ」
不可解な呟きに山口が突っ込んだあと、何かに気がついてキョロキョロとした。
「ちょっとごめん、店にマフラー忘れたっぽい。ちょっと待ってて」
山口が店に戻り、太田と楓ふたりになると、彼はなにかに気がついたように楓の後ろに視線を送りニヤリとする。どうかしたのかと振り返ろうとすると、すすすと近寄ってきた。
「太田さん?」
「子リスちゃん、いいことおしえてあげようか?」
「いいこと……ですか?」
「失恋の喪失感から早く立ち直る方法」
「え、そんな方法あるんですか?」
そんな方法があるのならぜひ知りたい。
興味を持って彼を見ると、どうしてかニマニマと笑っている。
「あるある、めっちゃ効果抜群だよ。おしえほしい?」
「はい、ぜひ!」
勢い込んでそう言うと、太田が指をちょいちょいとした。内緒話なのかと理解して、楓は耳を寄せる。
太田が意味深な表情で口を開いた。
「ズバリ、新しい恋をすることだよん。子リスちゃんさえよかったら……」
——そこへ。
「楓から離れろ」
唐突に誰かの声が割り込んできて、太田の声が途切れる。と、同時に肩をぐいっと太田と反対側に引っ張られた。
驚いてキョロキョロし、自分の背後にいる人物が誰かに気がついて楓は声をあげる。
「い、伊東さん⁉︎」
彼は威嚇するように太田をひと睨みしたあと、楓に向かって真剣な目を向けた。
「楓、太田はダメだ。俺のことが信用できないのはわかる。いや俺がこんなことを言う資格がないのはわかっているが、彼はダメだ。そして俺の話を聞いてほしい。謝らせてほしい」
突然現れただけでも意味不明なのに、いったいなんのことを言っているのかさっぱりわからず楓は目を白黒させる。