フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
フィクションじゃない
大通りで拾ったタクシーに乗って、伊東に連れてこられたのは、住宅街にあるBARだった。
タクシーの中で「人目がある方がいいだろう」とか、「もう同じことはしないから」などと言う伊東に、神妙に頷きながら、楓は心の中で首を傾げていた。
いまひとつ話が見えない。
店内にはカウンターの中にマスターがひとりいるだけで、他に客はいないようだった。
「マスター、ごめん。この子と話があるんだ。そこにいて ほしい。奥の席いい?」
伊東はここの常連のようでマスターに断って、BOX席に楓を促す。マスターは一瞬驚いたようではあったが、にっこりと頷いた。
「マスターは信用できる人だから」
その言葉に頷く楓の向かいの席に腰を下ろして、伊東はいきなり頭を下げた。
「ごめん!」
「……へ? えっと……」
「この間……のことだ。いきなりキスして悪かった」
「キッ……!」
率直な言葉に楓は真っ赤になった。
静かな店内で、マスターもいるのに……と思うけれど、伊東らしいとも思う。
妙に潔いというかなんというか。
そしてようやく楓は、彼のこの態度の理由に思いあたる。
早苗が言っていた『強制わいせつ罪』というワードが頭に浮かんだ。
つまり彼はあの日の楓の反応を見て、やり過ぎたと思ったわけだ。
「訴えると言うなら、協力する」
逃げも隠れもしないという態度の伊東に、ああ、申し訳ない、と楓は思う。
あの時、私が変な反応しちゃったから……。
とりあえず楓の気持ちがバレたというわけではなさそうだが、それよりももっと深刻な方に話が進んでいたのだ。
急いで首を横に振る。
「大丈夫です。私、怒ってません。そもそもデートしてほしいって頼んだのは私ですし」
「いや、そういう問題じゃないだろう。だからといって、そこまでとは思っていなかっただろうし」
楓が遠慮していると思ってか、伊東は納得しなかった。
男女の付き合いに関するふたりの経験値のズレから起きた事故のようなものに、律儀だ。これ以上罪悪感を持ち続けてほしくなくて、どう言えばいいか考える。
早苗と話をした時のことを思い出した。
「嫌じゃなかったですから」
「え」
タクシーの中で「人目がある方がいいだろう」とか、「もう同じことはしないから」などと言う伊東に、神妙に頷きながら、楓は心の中で首を傾げていた。
いまひとつ話が見えない。
店内にはカウンターの中にマスターがひとりいるだけで、他に客はいないようだった。
「マスター、ごめん。この子と話があるんだ。そこにいて ほしい。奥の席いい?」
伊東はここの常連のようでマスターに断って、BOX席に楓を促す。マスターは一瞬驚いたようではあったが、にっこりと頷いた。
「マスターは信用できる人だから」
その言葉に頷く楓の向かいの席に腰を下ろして、伊東はいきなり頭を下げた。
「ごめん!」
「……へ? えっと……」
「この間……のことだ。いきなりキスして悪かった」
「キッ……!」
率直な言葉に楓は真っ赤になった。
静かな店内で、マスターもいるのに……と思うけれど、伊東らしいとも思う。
妙に潔いというかなんというか。
そしてようやく楓は、彼のこの態度の理由に思いあたる。
早苗が言っていた『強制わいせつ罪』というワードが頭に浮かんだ。
つまり彼はあの日の楓の反応を見て、やり過ぎたと思ったわけだ。
「訴えると言うなら、協力する」
逃げも隠れもしないという態度の伊東に、ああ、申し訳ない、と楓は思う。
あの時、私が変な反応しちゃったから……。
とりあえず楓の気持ちがバレたというわけではなさそうだが、それよりももっと深刻な方に話が進んでいたのだ。
急いで首を横に振る。
「大丈夫です。私、怒ってません。そもそもデートしてほしいって頼んだのは私ですし」
「いや、そういう問題じゃないだろう。だからといって、そこまでとは思っていなかっただろうし」
楓が遠慮していると思ってか、伊東は納得しなかった。
男女の付き合いに関するふたりの経験値のズレから起きた事故のようなものに、律儀だ。これ以上罪悪感を持ち続けてほしくなくて、どう言えばいいか考える。
早苗と話をした時のことを思い出した。
「嫌じゃなかったですから」
「え」