フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
この俺が⁉︎と思ったけれどよく考えれば当然だ。倫の外面に簡単に騙され、好きだ好きだと言う愚かな人間を、好きになんてなるわけがない。
 
とはいえすぐにだからなんだと思い直した。自分が人を好きになったことがないからといって、相手におしえられないというわけではないだろう。
 
これまで俺を好きになった女がどのくらいいると思う?
 
一回デートでもして、俺の完璧なエスコートを受ければ一発だ。
 
恋愛経験皆無の女なんていちころだ。
 
——けど。
 
倫はスマホを取り出し呟いた。

「早く連絡してこいよ」
 
行き先についての藤嶋楓からのリクエストがまだ来ないのだ。約束の日は数日後に迫っているというのに。
 
いや、ないならないでお任せしますと送ってこい。そしたらお前に相応しいプランを用意してやる。普通の女と違うのは確かだが、この俺にできないことはない。
 
なんにしても、今さらキャンセルはダメだからなと、倫はスマホの画面を睨んだ。
 
その日は一日空けてある。俺の貴重な休日を割いてやるんだ、もうそのつもりになってるんだから今さらキャンセルは受け付けない。
 
などと考えていると、スマホが震え藤嶋楓の文字が浮かび上がった。
 
目にした瞬間、倫の心臓が飛び跳ねて、そんな自分の反応に動揺する。
 
え? なに? なんで俺ドキッとしてるんだ?
 
……いや、ただ驚いただけだと自分自身に言い聞かせて、メッセージを開いた。
 
キャンセルは、不可だからな?

《スカイツリーでお願いします》
 
思わずふっと笑いが漏れる。

「田舎者め」
 
休日のスカイツリーなんて人を見に行くようなもん。大人同士のデートで行くとこか?
 
これだからお子ちゃまは。
 
まぁまったく恋愛経験がないなら仕方ない。ある意味可愛いと思わなくもないこともない。こともない。
 
スカイツリーなんてベタすぎるけれど、それなら、ちょうどいい店がある。
 
あそこへ連れていってやれば、あいつはどんな反応するだろう?
 
意味不明の高揚感に 突き動かされながら、倫はさっそく了解とメッセージを返信する。そしてそのままスマホを操作してあるサイトにアクセスした。
 
なぜこんなにも楽しみにしてるんだという疑問が頭をよぎるけれど、無視をした。
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