皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「雨が降っているからと、何も言わずに私にマントをかけてくださった。あの日、冷たい雨よりも、その優しさに心が温かくなったんです。」

アレシオ殿下の瞳がわずかに揺れる。私は続けた。

「私が“お会いしたい”と手紙を出したとき、翌日には本当に来てくださった。多忙な殿下が、すぐに……」

それは、形式ではない。思いやりからくる行動だ。

「“皆に等しく”を信条とする人が、そんなことをするでしょうか? 私は、知っています。あなたは、思いやりを持った方です。どうか、それを忘れないでください。」

私の声は震えていた。でも、心はまっすぐだった。

その瞬間だった。

アレシオ殿下が、突然私を抱き寄せた。

「えっ……」

驚いて周囲を見渡すと、試験官も、執務官たちも、皆がこちらを見ている。

「……あの、殿下。他の方が見ています。」

私が慌ててそう言うと、殿下は微動だにせず、静かに囁いた。
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