皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「アレシオ殿下が、あなたの屋敷を訪れたというのは……本当ですか?」

私は、小さく「はい」とだけ答えた。

その返事を聞いて、試験官はため息をついた。

「……本当に、罪深いお方ですね。」

「どういう意味ですか?」思わず問い返す。

試験官は、私をちらりと見て、どこか寂しげに言った。

「そんなことをされて、アレシオ殿下に……本気にならないのですか?」

その言葉に、私は胸を突かれる。

たしかに――私は、心惹かれている。試験であることを忘れてしまいそうなほどに。

「妃に選ばれなければ、あなたはその気持ちを諦めなければならないのに。」

その一言が、胸の奥に静かに染み込んできた。

そうだ。選ばれなければ、私はただの受験者。

心を向けたところで、意味はない。

それでも――切なさだけが、残っていた。
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