皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
ただの試験だったはずなのに。気づけば、心も体も彼に預けていた。

アレシオ殿下の体温と鼓動が、私の胸の奥に深く染み込んでいくようだった。

時間が止まったようだった。

私とアレシオ殿下は、言葉もなく、ただ静かに抱き合っていた。

どちらからともなく体を離すことができず、ぴたりと寄り添ったまま、長い時間が流れていく。

殿下の指先がそっと私の髪に触れ、優しく絡める。

その仕草がくすぐったくて、でも愛おしかった。

そして彼は顔を近づけてくる──けれど、途中でそっと引く。

また見つめて、近づいて、そして離れる。

その繰り返しが、もどかしくて胸を締めつけた。

「アレシオ殿下……?」

私がそっと声をかけると、殿下は切なげな眼差しで私を見つめた。

「……君にキスしたら、一時では終わらないと思う。」

その言葉に、彼の本心がにじむ。私の心にも、静かに波紋が広がる。

「帰したくなくなる。」
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