皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「これが……恋というものなのだろうか」

殿下の低い声が、静かに私の胸に降りてきた。

私は何も答えられなかった。

ただ、その言葉を、心の奥深くに刻み込むしかなかった。

そしてついに、アレシオ殿下の手が私の腰からそっと離れた。そのぬくもりが遠のいた瞬間──控室の扉が静かに開かれた。

「失礼します。」

近衛が頭を下げ、その背後には私の馬車の従者が控えていた。

「……ああ、ごめんなさい。今、行くわ。」

名残惜しさを胸に、私は従者に向かって一歩踏み出す。

けれど──その瞬間、思わぬ言葉が従者の口からこぼれた。

「お嬢様、本日はディナーを、皇太子殿下とご一緒されると伺いましたが……本当ですか?」

「……えっ?」

驚いてアレシオ殿下を振り返る。殿下は何も言わずに近衛に視線を送った。

「そういうことでございます、皇太子殿下。」

近衛は微笑を浮かべ、さりげなく言葉を重ねた。
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