皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「令嬢は結婚前に男と一晩を過ごすなど、本来あってはならないことだな。」

低く囁かれた言葉に、私は静かに彼の手を握る。

「でも、ただの男ではありません。この国の皇太子殿下です。」

そう。誰より高貴で、誰よりも私の心を揺らす人。

この夜を共にすることが、どれだけ大きな覚悟を伴うか分かっていた。

それでも――私の想いは、もう揺るがなかった。

「私に……一晩の夢をください。」

声が震える。でも、視線は逸らさなかった。

たとえこの人以外の誰とも、もう結婚できなくなったとしても構わない。

私は、この人のものになりたい。

「覚悟はできています。」

そう告げた私を、アレシオ殿下は強く、優しく抱きしめた。

まるで、決して手放すまいとするように──。

ゆっくりと、唇が重なった。

まるで壊れ物に触れるように、そっと、丁寧に──。

大切にされていると、肌でわかる。

「……俺は、君の夢になれるのだろうか。」

囁かれた声が震えていた。
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