皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「一晩だけでもよかった。どうしても、この想いが報われるならって……」

その気持ちは、痛いほどに分かった。恋は時に、理性を超えてしまうものだから。

「でもね、殿下は……“君の名誉に関わるから”と、遠慮なさったの。」

その一言に、私は思わず目を伏せた。

アレシオ殿下は誰にでも優しい人だ。けれどその優しさは、誰にでも与えられるものではない。

私が受け取ったものは、確かに“特別”だったのだ。

「その時はね、誠実な方だって……思ったの。私、大切にされてるんだって……」

エミリアの瞳に、ひとすじの涙がこぼれ落ちた。

「でも本当は……私はアレシオ殿下の心を、勝ち取れなかっただけだったのよね。」

その告白があまりに切なくて、私はそっとエミリアの手を握った。

「……恋って、理性を失うものなのよ。本来は。」

あの夜のことが、頭をよぎる。私もアレシオ殿下も、自分を保てなかった。

いや、保てなかったからこそ、愛だったのかもしれない。
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