皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
「だから……私は、最終試験から退くことにしたわ。」

「エミリア……!」

思わず声が震えた。あんなに、アレシオ殿下を想っていたのに。

「私には、アレシオ殿下の心を奪うことはできないもの。」

そう言ってエミリアは静かに立ち上がり、背を向けた。

その背中はどこか誇り高く、そしてどこまでも寂しげだった。

私は追いかけることができなかった。

ただ、胸の奥で確かに彼女の気高さを感じながら──彼女の歩む強さに、敬意を抱いた。

「皇太子殿下は、執務室におられます。」

そう告げた近衛のドナルドに導かれ、私は再び王宮の執務室を訪れた。

二度目の訪問。それでも扉の前では、鼓動が早まる。

「──ああ、セラフィーヌ。」

私の姿を見つけるなり、アレシオ殿下はまっすぐに歩み寄ってきた。

「すまない。どうしても、君の顔が見たかったんだ。」

その声音に宿る寂しさと熱に、胸がぎゅっと締めつけられる。
< 139 / 234 >

この作品をシェア

pagetop